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 アイコン Vivendo insieme〜同居人〜

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   こちらはまだ完結していません。途中までで申し訳ありませんm(_ _)m

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その後―――。

隼人はひとり学校への道のりを歩いていた。

あのあと20分ほど沢田家のまわりをうろうろと歩き、公園があったのでそこで一服しようと思ったのだが

そう言えばタバコも持ってきていなかったと気が付いて、仕方なく家へとUターンしたのだった。

だいぶ落ち着いてはきていたが、まだ身体の中がポッポッと火が灯ったように熱い。

別にあれは事故だったのだから、どうってことは無いはず。

キスなんてものはイタリアにいた時に、もう何度も経験している。

その先の事だって、無いわけじゃない。

それがたまたまこんな形で、男としてしまったというだけ。

――…別に気に病むほどのことでも無い。

(…………なのに……、こんなに身体が火照るのは何故なんだろう………)

あのあと綱吉にも「…ごめんね、……恥ずかしいんだけど、俺すごく寝相が悪くて……」と

顔を真っ赤にして謝られてしまった。

………それが不覚にもかわいいなんて思ってしまったのは、きっと不慣れな生活で身体が参ってしまっているせいだ、と、

おかしな思考を頭から追い出した。

――彼には悪かったが、どうにも身体が落ち着いてくれなさそうだったので

「今日はちょっと寄るところがあって…」なんて拙い言い訳をして、彼の母が用意してくれた朝食も食べずに

家を飛び出して来てしまった。

(―――…奈々さんには、帰ったら謝らねぇとなぁ……)

他人が自分の為に朝食を用意してくれたなんて、本当に何年ぶりだろうか……。

―――なのに、それを自分の都合で断ってしまった…。

「―――……しっかりしろ、俺―――!」

パチンと両頬を叩いて気合いを入れる。

だけれどたぶん、目の下はほんのり赤くなっているんだろうな、なんて思う。

「はぁぁ……。……とりあえず、屋上行くか……」

あまり授業に出る気にはなれない。

2時間ほど暇をつぶしてから教室に行こうと、隼人は重たい足を無理やり前へと進めた―――。





一方、その頃綱吉は………。

一緒に登校しようと思っていた彼に置いてけぼりをくらってしまい、ひとり寂しく登下校用の道を歩いていた。

「―――…はぁぁ……。俺、またやっちゃった……。

きっと獄寺くん、俺のこと嫌いになっただろうなぁ………」

寝相が悪いのは昔からで、その上自分は寝汚いと来ている。

ベッドから落ちたのも全く気付かなかったし、いつのまにかその布団にもぐり込んでしまっていた。

「………俺、変態かよ………。グスン」

彼が嫌悪を感じるのももっともだし、反論されても何も言えない。

それでもやっとできた新しい友だちだったのに、ほんの1日も経たないうちにその関係を自分からぶち壊してしまうなんて、

もう情けないを通り越して悲しすぎた。

背を丸め意気消沈ぎみで歩いていると、ふいに背中から元気な声がかかり背中をバシンとはたかれた。

「―――よっ、ツナ。おはよさん!!」

「――……あっ、山本、……おはよう……」

「…なんだよ、元気ねーじゃん。どうしたんだよ」

ちらりと見上げると不思議そうな顔で山本が自分を見下ろしていた。

(………そう言えば、山本は俺が寝相悪いの知ってたよな……)

彼とは何度か泊まりがけで遊んだことがある。

その時あまりの寝像の悪さに大声で笑われたことがあった。

―――…なんというか、山本は大したことでは動じないので、綱吉にはそれがとても有り難かったのだ。

きっと、今朝あったことも話せばちゃんと聞いてくれるだろう。

――そして綱吉は獄寺が家に居候を始めた経緯から、すべてをこと細かに話し始めたのだった―――。



「――ふぅん、……で、今朝は置いてけぼりをくらったんだな?」

「うん…。俺、嫌われちゃったかな…?……どうしよう山本……!」

「大丈夫だって。寝相の悪い奴なんて世の中いっぱいいるんだぜ?ツナだけじゃねぇよ」

「……うん、それはそうかもしれないけど、さぁ………」

赤い目をしてしゅんとうなだれる綱吉に、山本は(……おっ?)と思う。

綱吉はいい意味でも悪い意味でもあまり人に執着しない。

自分が友だちになる前の彼は、ひとりでいることにさえ疑問を持たない人間だった。

(……いい傾向なんだろうな)

まぁ、獄寺の反応もちょっと気になるが、罵倒されたとか完全にシカトされたとかじゃないんだから

恐らく大丈夫だろう。

(あとで獄寺探しに行くか………)

やっと人に対して執着をおぼえだした大切な親友の為に、山本はひと肌脱いでやろうと

優しい笑みを浮かべたのだった。





「―――よっ、おはよさん」

綱吉を教室に送り届け「ちょっと顧問に呼ばれてんだ」とさりげなく教室を抜け出して、

獄寺がいそうなところを中心に校内をうろうろしていたら、案の定、屋上でタバコをふかしている彼を見つけた。

山本の声にチラリと視線を向けたが、何も言わずにまた逸らされた。

(―――…ありゃ…、ツナには普通…いや敬語だっけか?友好的だったみたいなんだけどな……)

なんなんだこの差は…―――。

(とりあえず、まだこいつの事いくらも知らねぇしな…。ちょっと様子を探るか……)

山本は獄寺から3メートルほど離れたあたりのフェンスに寄りかかった。

そして何も知らないとでも言うように、ことさら明るく話しかける。

「学校来たらお前いないしツナは泣きそうな顔してるし、心配になって見に来たんだけど……、

おまえらなんかあったの?」

するとどの言葉に反応したのか、彼がものすごい勢いで振り返った。

(………おおぉ…、必死だな…)

「――…つ、綱吉さんが、泣いてただと………!?」

「……いや、泣いちゃいねぇよ。大丈夫だから、とりあえず落ちつけよな……」

どうどうと宥めすかすようにすると、彼はぎらぎらした目はそのままに少しだけ勢いを落とした。

「……んー、どこから話せばいいかな。

――えっとな、ツナってちょっと前まで友だち全然いなくてさ、いっつもひとりだったんだよ。

だから人より人間関係に敏感っつーか、あんま分かんないかもだけど、おまえのこともスゲー大事に思っててさ、

だからおまえに置いて行かれたのが大分ショックだったらしいのなー」

そこまで言うと、獄寺は何か考え込むようにして顔を伏せてしまった。

「でもさ、お前もなんかあったんだろ?

俺も、獄寺がツナんちに居候してるってのは今朝聞くまで知らなかったから、ちょっとびっくりしたけどさ。

――…ツナ、寝相ワリ―からなぁ〜……」

以前のことを思い出しつつ言葉を選べば、獄寺は顔を真っ赤に染めて山本の顔を凝視した。

「………な、な、な、な……!?なんでテメーが綱吉さんの寝相のことを知ってんだよっ…!!

ま、まさか一緒に寝たことあんのか……!!?」

「――はぁっ?何だそれ。

一応俺もあいつの親友だから、泊まりに行ったり泊まりに来たりって事はあるよ。

でも普通それくらいあんだろ?」

「!! っ、それだけだぁ…!?ひとつ屋根の下じゃねぇか!あの人のことだ、なんかあっても不思議じゃねぇ…!!」

(……なんつうかこいつ、ツナの事に関してだけは嫌に噛みつくな……)

ちょっと気性の荒いとことか、すぐ吠えるとことか、マジ犬っぽい…。

「………あのなぁ、獄寺。友だちなのになんかあるわけねーだろ?おまえちょっとズレてるぞ」

(……そんなにツナのこと気に入っちゃったのかぁ……。まぁ、分かんないでもないけど……俺は女専門だし?(笑))

「っていうか獄寺…、やっぱりなんかあったんだな…?」

(マジわかりやすい奴……)

呆れるを通り越してちょっと可愛くさえある。

「話してみろよ。ツナには言いわねぇし、ひとり悶々と考え込んでるよりは解決策が見つかるかもしんねーだろ?」

ニッと笑ってやれば彼は尚赤い顔をしたまま、「………くっ……。………、それが…」

と、苦々しい顔のまま、ゆっくりと語り始めたのだった―――。





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