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 アイコン おとどけものです。

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   パラレルごくつな。22歳の大学生話。獄寺くんが運送会社で働いてます^^

 ライン ライン

「ふぅぅ…、これで終わりかな………?」

身も凍えるような2月の夜に、最近出会ったばかりの数少ない友人のひとりが、自分の家の風呂場でぶっ倒れる

(しかも真っ裸…!……って風呂場なんだからあたり前だろうけど…)という数少ないキテレツな出来事の後始末を終え、

狭い部屋のシングルベッドの上で寝息を立てているその人を見やり、綱吉は「はぁぁ…」と力無いため息をついた。


「……なんて言うかさ…、君ってホントぶっ飛んでるよねぇ…。どーして水なんか浴びてたんだろ……?」


――数時間前、狭いユニットバスから響いた鈍い音に、何事かと急いで風呂場のドアを開けてみれば、

体調不良で倒れたのであろうその人は、0度を下回る気温の夜になぜか冷水を頭から浴びていて、

恐る恐る触ったその身体はまるで氷のように冷たかった。

急いで脈拍と呼吸に異常が無いことを確認し、あたたかなシャワーを身体全体に回し掛けると、

自分より重い身体を担ぎあげ、フラフラする足を叱咤しながら、どうにかベッドへと寝かせることに成功したのだった…。


――…しかし、難関はそれだけじゃあ無かった…。

意識の無い身体はあまりに重たすぎて、あぁもう、上手く服が着せられない。

同じ男のものとは言えあまり直視するのは失礼だろうしと、仕方なく下着とズボンだけを履かせ、上半身に毛布を巻くと、

いつも使っているミニ湯たんぽを足もとへと忍ばせた。

(…暖房してるから、そんなに寒くない筈だけど………。でも、これ絶対風邪引くよね…?)

ふぅ、ふぅ、と規則正しく呼吸する口もとは、いつもより紫掛かったように見える。

肌にも色が無く、固く寄った眉間のしわは苦しそうに歪んでいて、それが綱吉にはとても可愛そうに映って、

思わず指先を伸ばして眉間をさすると、気のせいかな…?

ほんの少しだけ、それが緩んだように見えた。

(――…? 怖い夢でも見てんのかな……?)

ベッドサイドに腰を下ろして、いつも実家のチビ達にしてやっていたように軽く髪を梳き撫でてやれば、また表情が少し解けた。

(――…よしよし、良い子良い子。今はよく寝なさいね)

まるで母親になったようなおかしな心境に、綱吉はクスリと小さく笑う。

(……昔、ランボがぐずってなかなか寝ない時に、こうやって髪を撫でてやったっけ………。

子供って、意外とスキンシップが大事なんだよな…。寂しい時とかは特にさ……)

「本当は大人にするようなことじゃないんだろうけど……、まぁ、気持ちよさそうだから、…いいよね」

冷たい額にするりと指先を滑らせると、さっきまで苦しそうに歪んでいた目元と口もとに、

僅かに小さく笑みが浮かんだ。

そんな子供のような様子に、自然と頬が緩んでくる。

「――……うん、もう大丈夫かな………?

――今のうちに、コンビニ行って来ちゃいますか…!」

ゆっくりと腰を上げ、もう2年も前から使っている少しくたびれたPコートに腕を通した。

玄関のドアを開けると、外はまだ雪が降っていた。

「……積もるかなぁ…、雪」

明日は久しぶりの仲休みかなぁ、と、サクサクと積りたての真っ白な雪を踏みつけながら、

自宅のベッドですやすやと寝息を立てている人を思い浮かべる。

(まだ熱はなさそうだったけど、明日になったら酷くなるかもしれないし…、スポーツドリンクと冷えピタくらいは

あったほうがいいよね)

白い息が深い色の空気に溶けて行って、あまりの寒さにポケットへと手を入れると、綱吉は思わず「…あっ」と小さな声を上げた。

「――……コレ、持って来ちゃった……。

後で返しとかないと、まずいよねぇ…………?」

――しかし、なんでこんなものが彼のポケットに入っていたんだろう………。

古ぼけた、小さく切り取られたその写真。

丁寧にもラミネート加工されたそれには、よく見慣れた子供が恥ずかしそうに笑って映っていた。

―――…恐らく、4、5歳くらいの、

………………俺の写真。


「…ホント、なんでこんなもの持ってんだよ、君は……」

最近メル友になったらしい母親の奈々が送ったんだろうか…?

「………まさかね」

――…じゃあ、あと考えられるのは………、

「……………」

(――…しかも、どっかで見たことあるんだよね、コレ)

あんまり考えたくないけれど、実家で撮られた自分の写真が家族間の間を巡りめぐって経由した結果、

彼の手に渡った、ということになるのだろう。

(……ホント考えたくない)

父親も祖父(本当は親戚だけど)までもがマフィア、事実生粋のマフィア家系の沢田家から、

綱吉の写真が持ち出された先はきっとマフィア…。

となれば必然的に、彼もマフィアに関係のある人物、ということになってくる。

(…せっかく仲良くなれたと思ったのに………。…まさかマフィアだったなんて…)

よくよく考えれば、あの運送会社だってボンゴレの持ち物だ。

まだ決まった訳じゃないけど、ちょっと複雑な気分だった。

でもそれは彼だけが悪いんじゃなくて、最初出会った時に、カタギの人間って言うには無理があった彼のオーラを

以外にも受け入れちゃってた自分にも非はある。

「……やっぱり、感化されちゃってたのかなぁ…、昔はあんなに異常だと思ってたのに………」

(それにしても、なんで何も言ってくれないんだろう…?)

マフィアの人間が、なぜ運送会社でアルバイトなんかしてるのか。

なぜ、正体を隠すのか…。

「……ふぅぅ」

(――…傘、持ってくればよかったかなぁ……)

絶え間なく降り積もる雪に背筋が凍る。

綱吉は頭に積もった雪を、冷たくなった手のひらではらい落とした。


――目の前には暖かそうな光をたたえたコンビニエンスストア。


(……まぁ、言ってくれるの待つしかないか…。

こんなだから、もっとしっかりしろってリボーンにも言われんのかなぁ……)

綱吉は目の前に迫ったドアに手を掛けると、考えていたすべてを、頭の中から追い出した。





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